MYSTAR BASE 高梨伴基さん
コスギーズ!とは…
利便性や新しさだけでなく、豊かな自然、古きよき文化・街並みもある武蔵小杉は「変わりゆく楽しさと、変わらない温かさ」が共存する素晴らしい街です。そんな武蔵小杉の街の魅力をお届けするべく、この企画では街づくりに携わり、活躍している人をご紹介していきます!
「全国区で認知される、武蔵小杉ならではのバウムクーヘンを作りたい」 スイーツで挑戦を続けるMYSTAR BASE 高梨伴基さん
新丸子のバウムクーヘン専門店
新丸子駅を降りて、イダイモールよりも一本多摩川寄りの通り(三ちゃん食堂がある通り!)を日医大方面へ進むと、1、2分ほどで見えてくる、とってもおしゃれなつくりのお店。
外装のおしゃれさに、あれ? ここは原宿かどこかだったかしら? と思ってしまうくらいなのですが、こちらのお店は2022年4月にこの場所にオープンした、バウムクーヘン専門店「MYSTAR BASE」です。
グランツリー武蔵小杉の近くで、毎日行列ができているパンケーキ店「3STARS PANCAKE」の姉妹店として、知っている人も多いのではないでしょうか?
本日は、武蔵小杉と新丸子でこのように特色のあるスイーツのお店を手がける、高梨伴基(たかなし・ともき)さんにお話を伺ってきました。
色とりどりのバウムクーヘンケーキ
お店の中に入ると、ショーケースに並ぶ色とりどりのケーキが目に飛び込んできます。これらはすべて「バウムクーヘン」をアレンジした生ケーキなんですね。
どれもすごく「映える」デザインで、選ぶ方も目移りしてしまいそうです。
もともと体育を専門としていた
こちらが、この素敵なお店のオーナーである高梨伴基さん。
千葉県柏市のご出身です。
「少年時代は、野球をやっていました。体を動かすのが好きで、そのうち団体で体操をやるようになりました。学生時代には、子どもたちに体育を教える仕事をしていました。」
若い時から独立願望があり、スポーツ系で起業がしたいと考えていて、その開業資金を貯めるために、大学3年の頃から飲食店で働きました。
銀座にある創作料理のレストランで、一流の接客と料理を学んだ高梨さんは、この仕事が自分に合っているかもしれない、と感じるようになります。
「昼も夜も、ホールに出てお客様にサービスをしたり、料理のことを考えたりしていると、自分の得意なことがわかってくるんですよね。知識も増えて、貴重な経験だったと思います。」
スポーツで独立するのは難しいと感じていたこともあり、27歳の時、飲食で独立しようと決心しました。
パンケーキならお客さんをハッピーにできる
「当時パンケーキのお店が流行り始めていましたが、まだそこまでのブームではありませんでした。これなら自分にもできるし、何よりお客様をハッピーにできる、と思いました。」
そう思い立った高梨さんは、原宿にあるパンケーキのお店に入って、スイーツ店を始めるために必要なことを学びました。
「銀座のお店は高単価だったので、それなりにお客様を満足させられるセオリーがありました。でも、カフェという業態はそうじゃない。何がお客様の満足やリピートに繋がっているのかを知りたくて、個人でとても流行っているお店で働かせてもらいました。」
初めてのお店を武蔵小杉にオープン
そして、30歳の時に武蔵小杉に初めてのお店「3STARS PANCAKE」をオープンしました。
数ある街の中から武蔵小杉を選んだのには、何か理由があったのでしょうか?
「今までアルバイトなどで関わってきたお店は、銀座や原宿、六本木などで、繁華街の良さはありつつも、流行に左右されやすく、本来の評価がわかりづらい街でした。せっかくスイーツにチャレンジするのだから、地に足がついたというか、地元の人が通ってくれるような場所でやりたいと思っていました。」
3STARS PANCAKE ができた2016年秋は、武蔵小杉東急スクエアができてから3年が経ち、グランツリーも開店してから2年が経とうとしている頃で、ちょうど武蔵小杉の再開発の形が整って、子育て世代からの人気も定着した頃でした。
「友人から武蔵小杉が面白いと聞いて見にきてみたんです。街がすごくきれいで、ここでやったらお客さんが喜んでくれるんじゃないかな、というイメージが自然に沸きました。」
台風が逆に縁をくれた
グランツリーからほど近い府中街道沿いのお店は、建物も新しく、立地もとてもいいですよね。車で府中街道を通る人も、行列が気になって後から調べてみるといった、行動に繋がっているようです。
あの場所にお店を出す時には、何かきっかけなどあったのでしょうか?
「立地がいい上に新しい建物ということで、応募は多かったようです。内見には50人くらいくると聞いていたのに、その日に偶然台風が直撃して荒天になったので、他の人たちが来られなかったんですね。それで、内見できた私が契約することができました。」
すごい!
その3年後には台風でちょっとマイナスのイメージもついた武蔵小杉でしたが、悪いことばかりではなかったようです。
チャンスをしっかり自分のものにできるのも、確固たるイメージをもって、ブレずに出店先を探した高梨さんの芯の強さにほかなりません。
「オープンの日は、とってもよく晴れていました。今でもよく覚えています。」
口コミで一気にお客さんが押し寄せた
「3STARS PANCAKEは、特にマーケティングをすることもなく、オープンしてからは口コミで広がって、あっという間にお客さんが引きも切らずに来てくれるようになりました。前のお店で繋がっていたインフルエンサーさんなどが来てくれて、積極的にSNS発信をしてくれたのも大きかったのかもしれません。」
私も何度も訪れたことがありますが、ふわふわのパンケーキに、季節のフルーツがふんだんに使われたトッピング。どんな角度で写真を撮ってもきっちりと決まる、計算された見目麗しさ。
「観光客の来る立地ではないけれど、これだけたくさんの人が住んでいるなら、特に何もしなくても、感度の高い人が来てくれて広まっていくという自信はありました。路面店ではないけれど、場所はあんまり関係ない、SNSがあれば、やっていけるだろうと思っていました。」
3STARS PANCAKEは、地域の垣根をあっという間に超えて、県外からもたくさんのお客様が足を運び、長蛇の列を作る人気店になりました。
特色のあるお土産を
3STARS PANCAKEの成功を踏まえて、高梨さんが次に思い描いたのは、「お土産になるスイーツ」でした。
「コロナ禍で、1ヶ月くらいテイクアウトだけでやらなきゃいけない時期がありました。でもその時期には、もともと見込んでいた地元の方々が足繁く通ってくれるようになりました。」
地域のいろいろな人と話すうちに高梨さんは、もっと自分たちのやっていることを知ってもらうために、テイクアウトできて、気軽にお土産に持っていけるお菓子があるといいのでは? と思うようになり、次なる挑戦の道が見えてきたのでした。
新丸子に2店目をオープン
そして、2022年に新丸子に2店目となる「MYSTAR BASE」をオープンする運びとなりました。
高梨さんが選んだスイーツは「バウムクーヘン」でした。
「日持ちがよくて、縁起もいいのに、好きなスイーツのランキングのなかではあまり上位に入ってこない。そんなバウムクーヘンの専門店は、都内やこの辺にはないし、ガラス張りで、作っているところを見られるようにしたら面白いお店作りができるんじゃないか、と思いました。」
カフェ業態だった「3STARS PANCAKE」とは大きく異なり、菓子製造業として新しい挑戦をすることになりましたが、苦労も多くありました。
「カフェは、作ってそれを売るというサイクルなのである程度は読みつつやれるんですが、製造業は在庫を抱えないといけない。ギフトとして箱に入れて売るのでその資材が必要で、それもまた個数をはかって発注しないといけない。製造するのにも人手が必要で、お客さんを呼び込むのにも飲食店以上に工夫が必要になります。」
- 今は何人くらいの方がこちらで働いているんですか?
「今は8人くらいですね。バウムクーヘンはこうやって棒に巻きつけて作るので、焼いてすぐには次の工程に入れないんです。焼いたものを一晩寝かせて、次の日にグラスをかける、という段取りで、二班に分かれて作業しています。」
新しいものを「掛け算」で生み出す
人手の次に大変だというのが、やはり集客。
「武蔵小杉からは近いし、3STARSのお客さんが流れてきてくれることも期待していたのですが、来てくれないんです、遠いらしいです(笑)。」
武蔵小杉に新しく引っ越してきた人たちなどは、新丸子エリアにまだ、馴染みがないのでしょうね。
「だから、カフェの部分を充実させて、バウムクーヘンのケーキを作ったり、ソフトクリームと掛け合わせたり。試行錯誤をしています。やっぱり、バウムクーヘンケーキはよく売れますし、SNSとの相性がいいです。」
-こちらのソフトクリームとバウムクーヘンの掛け合わせも、斬新ですよね。フォルムがかわいらしくて、つい注文したくなってしまいます。
「これは、夏にあんまり焼き菓子が売れないことへの対抗策を考えて生まれたスイーツです。夏のスイーツといえばかき氷なんですが、バウムクーヘンとかき氷は絶望的に合わなくて。結局濃すぎミルクソフトに、温めたバウムクーヘンを合わせることで、味がまとまって人気商品になりました。」
-濃すぎミルクソフトに、まるこバウムですね
「あ、たしかに。丸つながりですね(笑)。」
新横浜から、全国区へ
MYSTAR BASEは今年の2月に、新横浜駅直結のキュービックプラザにも出店しました。
「3階に、神奈川ゆかりのお菓子が集まったエリアが新設されて、そちらに入ることになりました。もともと、全国各地での催事によく呼んでもらって、地方に進出はしていました。福岡や札幌、広島、神戸なんかでもよく売れました。」
- 新横浜駅にお店があるのは嬉しいですね。東海道新幹線に乗る時に、お土産をさっと買う必要がある、というケースは多いと思います。そういう時に、MYSTAR BASEのバウムクーヘンをチョイスできるようになりました。
「神奈川のお菓子として認知されるようになれば、またブランドとして一段格が上がるし、とてもありがたいです。武蔵小杉の人に声をかけるのではなく、全国の人が神奈川のお菓子として認識することで、地元の人たちにも価値を気付いてもらえると思います。全国には『ご当地バウム』がいっぱいあるので、このエリアならではの素材を探しています。」
- すでにオンリーワンの風格がある高梨さんのスイーツですが、さらにオリジナリティのある『小杉バウムクーヘン』ができるのが楽しみですね。
街の「マイスター」として
マイスターベースの店名は、「私の星(お気に入り)」と「マイスター(職人)」を掛けた造語、と聞いています。
間近でバウムクーヘンを作っているところを子どもたちが見たら、まさに「やってみたい」と思うかもしれないな、と思いました。そういう、ものづくりへの興味の入り口があるというのも、まさに「マイスター」の名前にふさわしいと感じます。
お店のガラスに書かれていた「Each star is a mirror reflecting your true nature.
(あなたの本質がそれぞれの星を光らせる)」という言葉に、背筋がすっと伸びるような思いがしました。
夜空を見上げるわたしたちの目に憧れがあれば、そこにはいつもキラキラとした光が宿るのですね。街の中のスイーツ店というのは、きっと人波のなかの星のような存在なのでしょう。
高梨さんの飽くなき挑戦は、街の中でのイチオシスイーツを探すあなたの希望の星になるかもしれません。
高梨さんの「STAR」が照らし出す道行きが、今後もとっても楽しみですね!
ライター プロフィール
Ash
俳優・琵琶弾き。「ストリート・ストーリーテラー」として、街で会った人の物語を聴き、歌や文章に紡いでいくアート活動をしている。旅とおいしいお酒がインスピレーションの源。